ある日、なんとなくTSUTAYAに行った。
ふと本が手に取りたくなり、店内を散策。
「まったりおだやかになれる本が読みたいな」とぼんやり考えながら探すも、なかなかビビッとくる作品には出会えなかった。
そんな中、ふとこの本が目に留まった。タイトルに惹かれた。
パリ? メシ? わたしの好きなワードばかりだ。装丁も素敵。
まず裏表紙のあらすじを読み、ぺらぺらと流し読みした。ノンフィクションのエッセイに近いもののようだ。
わたしは今までフィクションの小説ばかり読んできた。エッセイなどのノンフィクションにはさらさら興味がない。
だからわたしは一度、この本を本棚に戻し、その場を離れた。
しかし、やはり気になる。
結局わたしは踵を返し、この本をカゴに入れた。
本との出会いは必然だったりする。
わたしはこの本を本能的に求めているような気がした。
作中に登場する人たちは、夢を掴むために強い意思を持って、もしくは流れるように自然と、フランスに行きついた。そんな彼らと実際に出会い、話し、そして絆を深めた作者の川内有緒さんが彼らについての話を綴っていく。
彼らは、やっていることも、フランスに来た意味も目的も違う。
でも、みんなに言えることは、自分らしく今を生きているところだった。
この本を読んでいて、ときには共感で目がうるむときもあり、ときにはコンプレックスからの嫌悪感を抱くときもあった。
わたしは、憧れや理想の生き方をしている人を見たときに、もしくは自分と正反対の思考をしている人をみたときに、直感で 「この人がきらいだ」と思ってしまうときがあることに気付いた。
素敵だなあと思うときもあった。でも、叶わなかったり諦めたりした夢や理想像であればあるほど、羨望の感情が歪んで表に出てしまう。
また、正反対の思考をしている人が輝いていればいるほど、対極にいる自分がダメな存在に感じてしまう。
これからは、「この人がきらい」と感じたときは、自分がなぜそう思ったのかをまず考えたい。
もちろん嫌いと感じる人の中には、その人の人間性や性格が自分と合わないというのが理由のときもあるだろう。
でも、もしかしたら、この本を読んで感じたように、本当はプラスの感情を抱いているはずなのに、歪んで出てしまっているときもあるかもしれないから。
特に印象に残ったのは、カメラマンのシュンさん、テーラーの周子さん、ヨーヨー・アーティストのYukkiさんだった。この三人の話を読んだときは泣いた。
シュンさんは、人として素敵すぎて泣いた。
周子さんの話では、作者のまとめの言葉が刺さって泣いた。
Yukkiさんは、才能もあり人に認められているのに「死にたい」と思ってしまう彼に共感して泣いた。
この本はすごい。
日本のド田舎でなんとなく生きている私と比べたら、作中に登場する人たちなんて雲の上の存在だ。だって、パリで暮らし、オリジナルの経歴を持っていて、成功している人たちばかりなんだから。
この本では、そういった特別な人生を歩む人たちをリアルに知ることができる。遠い存在のはずなのに、心が痛いほどに共感できる部分もたくさんあって驚いたし、なんだか救われた。
確かに彼らは雲の上の存在だ。でも、彼らもわたしたちと同じ人で、同じ地球の上で、同じように生きている人たちなんだ。そう思わせてくれる一冊だった。
経歴なんて関係ない。
ただ、自分らしく生きていることが、彼らを輝かせている理由なのだと、わたしは思う。